No.13 九州オープン

「優勝 高橋英行・綱渕登」
勝ちに不思議な勝ちありでございました。
勝負の格言に「勝ちに不思議な勝ちあり負けに不思議な負け無し」という言葉がありますが、まさにそのとおりの結果でありました。一回戦はシニアに近いテニス大好き紳士ペアが相手、マッチポイントを7本取られ、まさにアップアップの内容で先が思いやられるスタートとなりました。

昨年12月の国際インドアではディフェンディングチャンピオンとして期待されながら台湾の王・趙組に完敗(3位)を喫しましたので、この九州オープンで今オフ蓄えた力を発揮すべく、目標を立てて慎重に調整を重ねてまいりました。ここで内容ある戦い方をしなければ、この一年おそらく迷いながらの惨めなシーズンになるのだろうと思っていましたので、私も久々に力が入っておりましたが、残念ながら両名ともに自覚が薄く、強い闘争心や鋭い牙をむくという気持ちが見られないまま無残な試合を重ねていたのであります。

しかし、準々決勝で完璧に主導権を握られていた試合を、中盤から相手前衛を徹底的に攻撃するようになってから勝負の流れが変わってまいりました。それまで自由自在にボールをコントロールしていた相手後衛が少しずつ慌てだし、微妙にラケット操作を狂わせてきました。その後、相手ペアは大きく崩れ、結果的には4対2でしたが高橋の方に勝利以上に大きな自信が芽生えたのでございます。勝負とは恐ろしいもので、高橋は準決勝ではまったく別人のように顔つきまで変わり、徐々にではありますがフットワーク・球の回転まで申し分の無いものになってきておりましたが、綱渕の方は相変わらずボレー・スマッシュともにタイミングが合わず、相手との呼吸が半テンポずれ続けており、試合中に何度もポジションとスタートの修正を試みていましたが、どうにもならないままゲームが進むという状態でございました。相手は全日本社会人選手権者で2000年アジアチャンピオンの平山選手、序盤はテニスをさせてもらえませんでしたが、高橋が立ち直っておりましたので綱渕がどこでタイミングを合わせるかが大きな山場でございました。中盤に入りようやく絞りきれたのが相手後衛の軸足でのコースの読みでございました。読みきってからのゲームは淡々と進み、ようやく本来の動きが戻ってきた綱渕が偉大なプレィヤーのボールを面白いように取りまくっておりました。

決勝は2002年アジア競技大会(釜山)での優勝メンバーである韓国の「金煕洙」。
この選手と試合をしたいが為に、また見たいが為にやってきた人たちがどれだけいたか。集め得るかなりの量の情報を分析し福岡までやって来ましたが、さすが世界的プレィヤー、決勝までの勝負強さは素晴らしいものがあり、取りまくるスピードそして読みはやはり超一流でございました。因みに彼の評価は以下(文末)のようなものでありました。

準決勝が終わって決勝の打ち合わせ。基本的に複雑な戦術は無しに致しました。
高橋の復調・綱渕のタイミングの修正による自信の回復・準決勝での金選手の迷い(黒木・平原戦)・相手後衛の上半身のブレそしてフットワークの乱れ等を鑑み、正攻法でガップリ組んでゲームを進めることと致しました。勿論、相手後衛の若い「申潤洙選手」をしっかり攻めきることをベースにいたしましたが・・・。

決勝戦は福岡の方々の素晴らしい応援と本人たちの絶対に勝ちたいという本能(ようやくここで発揮されました)がゲームを大きく支配し、圧倒的な強さで初優勝を遂げたのでございます。
高橋が高い打点からタイミングを変えコースを丹念に攻め、繋ぎのボールは前衛セットでしのぎ(金選手はここの反応が遅かった)、綱渕は相手後衛がバランスを崩したときに自分を見せ、十分な形からはタイミングを変えて単モーションという天皇杯でも十分に通用する内容で圧勝しました。この自信はかなりなものと思われます。

どうか、朝から殴られ罵倒されながら一日踏ん張りきった二人に祝福の言葉をかけてやってください。

最後にこの機会をいただいた、福岡連盟の四方理事長と丸山選手そして応援いただいた皆様に感謝申し上げさせていただきます。

ありがとうございました。ひたすら全日本選手権を・・・。

 

 

金煕洙-キム・ヒースー(韓国)177センチ82キロ

2002 アジア競技大会(釜山)  国別対抗戦優勝・シングルス・ダブルス準優勝
おそるべき選手、真に恐るべき選手。彼を見た人はソフトテニスのイメージ修正をはからねばなるまい。とくにシングルスは彼にとって無人の荒野だ。ダブルスも飛躍的に進化しており、バズ-カ-サーブ・スマッシュも群を抜き、パワーでは比較できる人もいない。

2001 東アジア競技大会(大阪)  3種目全てメダルを獲得
日本で団体、ダブルス、シングルスの3種目にでたのは中堀選手、台湾では方同賢、そして韓国ではこの金煕洙だ。この3人がそれぞれの国の今回のエースと呼んで差し支えないと思う。 その中でこの金煕洙(KIM Hee-Soo)のみが3種目すべてでメダルを獲得した。スマッシュはまさに殺人的な威力をもち、特にシングルスでは冴え渡った。あれほどシングルスでスマッシュを決められる選手は他に知らない。腕っぷしの強さ、強靱なリストについ目を奪われがちになるが、それよりもここでは下半身の微動だにしない安定感に注目したい。これこそ彼のスーパースマッシュの秘密があると思われるからである。とにかくいかなるときでも上半身が全くぶれない。もちろん目線も全然ぶれない。この強靱な下半身があってこそ、あの腕っぷしの強さが生きるのである。

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