No.19 ドゥエンデ

今春卒業した「桑山幸大」が昨年6月北海道学生連盟最高の個人戦、第37回北海道学生選手権を初優勝したときの手紙です。彼は団体戦では一度もレギュラーに入れず、個人戦でもベスト16が最高の成績でした。しかし人間性を評価され、将来コーチへとの期待を込め、2年間もの長い間主務という激務をお願いしました。いつも柔和で笑顔を絶やさず、迷える部員達の相談相手として、そして部のまとめ役として、目に見えない最優秀選手として誰もが認める存在でした。
しかし、コートに入るとどうしてもストロークの癖が矯正できず、ボールを待つ間もいまひとつ掴めないまま、スマッシュのスイングスピードもアップできませんでした。ボレーも分析・判断までは詰めることができるのですが、最後の行動のタイミングがどうしてもズレてしまい、たびたび涙にくれるという試合がずっと続いていました。

 

「優勝が決まった時、最初に感じたことは、北海道学生連盟最高の選手権で学院が優勝できたことにホッとしたという気持ちでした。準決勝で蛭間・石井が千葉・日下部を先に倒したのを見た時に、自分も絶対に負けられないと思いました。
自分が準決勝で勝てば学院の優勝が確定するということもありましたし、一年生の二人がそこまでやったのに自分がやらないわけにはいかないという思いがありました。何より準決勝では本当に応援に助けられました。マッチも取られていたし、精神的にもかなり苦しい時がたくさんありました。そんな中、40名以上の仲間が、大きな声で自分達を応援してくれていました。何度応援の方を見たかわかりません。そして、何度勇気付けられたかわかりません。本当にみんなの声が自分達を奮い立たせてくれました。あの時、みんなの応援がなかったら、勝つことはできていなかったと思います。
優勝が決まった時は、みんなコートに降りてきてくれて自分の事のように喜んでくれていました。また、ずっと見守っていてくれた父、母、妹、叔父、叔母の前で優勝できたということもすごく嬉しく思いました。
その日はOBの方々を始め、多くの人に電話やメールをいただきました。「おめでとう」と言われる度に、自分は本当に幸せ者だと感じました。大好きなテニスを通じて、総監督、監督、コーチ、OBの方達、そしてたくさんの良い仲間に出会え、さらにこんな体験ができて、本当にここまで頑張ってきて、テニスを続けていて、札幌学院に入学して良かったと強く思いました。
自分に関わってくれているすべての皆様に感謝の気持ちで一杯です。もっと心の中では色々な思いがあるのですが、うまく言葉に表現できません。本当にありがとうございました。」

 

スペインの詩人「フェデリコ・ガルシア・ロルカ」がたびたび「ドゥエンデ」という言葉を使っています。
先日もある文献にも記載されておりましたが、闘牛士やフラメンコダンサーが、表現できないほどの素晴しい技を繰り出した時、天から降りてきて一瞬に足から抜けていく、それが「ドゥエンデ」で、日本語で言えば「神が降りてくる」状態なのだそうです。
作家の倉本聡さんは「ドゥエンデ」の境地が分かるようになってからは何日もかかるテレビ作品をたった一日で書き上げてしまうこともあり、まさに何かに取り憑かれたように書き終えると吐いてしまうこともあるようです。版画家の棟方志功さんも「俺は自分の作品に責任が持てない。作品を作っているのは自分ではないのだから」とも言っています。作らされているのだということです。

「ドゥエンデ」の条件は3点。
1)真直ぐにそのものに向き合っているかどうか
2)常にそのものに対し努力を継続しているかどうか
3)心がピュアかどうか

いずれにしても「自分の力だけではない」という、ある種の謙虚さを持ち、上記の全てが合致した時「ドゥエンデ」が訪れる可能性が高いようです。

私はこれまで随分とソフトテニスで「ドゥエンデ」に遭遇してきました。まさしく信じられないことが連続して起こるということです。それも自分が手塩にかけた選手たちが目の前で見せてくれる奇跡に唖然とするばかりでした。たとえば天皇杯でマッチポイントを何度も握られながら、その都度ベースラインにのるボールを打ち続け勝ち上がっていく選手。また関東オープンで同じくマッチポイントを握られながら、超スーパーフォローを連発し勝ち上がっていく選手。また九州オープンではいままで経験したことの無い試合の形を決勝でやってのけ韓国ペアを子ども扱いする選手など枚挙にいとまがありません。大学生の試合を入れるとそれはかなりの数となります。見たことも無い超高度なプレーをいとも簡単にやってのける、それも連続して目の当たりにすると不思議な気持ちにさせられます。
前述の桑山幸大はまさに第37回北海道学生選手権初優勝時ドゥエンデでした。目の前で躍動しボールを取り捲っていたのです。マッチポイントも凄まじいスピードで追いかけてのボレーでした。いままで彼の試合を見てきて始めて見させてもらいました。その後は残念ながら見る機会はありませんが・・・。

ピュアでいましょう。ソフトテニスに真剣に向き合いましょう。そして努力を継続しましょう。きっと「ドゥエンデ」が訪れ、新しい成長が待っているはずです。

新潟の教え子からメールが来ました。

 

お元気でしょうか?
春季リーグ、選手権優勝おめでとうございます。なかなかの名勝負だったことがホームページのBBSを見ていて解ります。

突然ですが・・・
佐藤総監督が見てきた1年間を教えて下さい。総監督の小部屋が更新されてから1年・・・
1年間捜索願いも出さずに辛抱しました(笑)小部屋にこもり過ぎです!!
新潟でも楽しみにしている学院関係以外の方々も多々おります・・・

僕も小部屋で多くの事を学んでおります!

僕はこの4月から高校の非常勤講師と私立女子高校のソフトテニス部の外部コーチとして働いております。新潟国体のために自分ができる事、やるべき事を考えた結果この高校教員の道を選び目指す事にいたしました。今後は講師をやりながら私立高校の教員を目指していく所存です。

追伸
今年の加藤は手強いです。豊嶋はゴルフ(?)が忙しいみたいです。松井はまだ日焼けもせず真っ白いです。相馬大先輩はおなかに増々貫禄が付いてお殿様のように幸せそうです。
高橋賢(成長しない左利き)をよろしくお願いします。
今年入った長岡商業から行った1年生ルーキー佐藤も宜しくお願いします。

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