No.24 熱い想い

卒業生の「渡部誠之」から、素敵な手紙を貰いました。現役生・卒業生問わず何かを感じさせられる文面です。
彼の心の中にある真摯な想いを感じ取ってやって下さい。 佐藤

 

佐藤総監督様

拝 啓

新年を迎えたと思ったら、あっという間に1月も終わりを迎え、早い月日の流れを今年も感じさせられております。お誘い頂いた新年賀詞交換会に参加できず、申し訳ございませんでした。

本年度も多くの現役学生より賀状を頂戴し、全員に対してコメントを記載して返信しました。多くの学生は技術の向上のみならず、人間形成の必要性を理解し、その向上を目標としている旨の賀状コメントが多く見られました。
又、今春卒業する学生達は、全員が我が部に在籍できた事を人生の誇りとして感じているようでした。大変嬉しい限りです…

年末の大掃除の最中、学生時代のドローがダンボールの中から出てきました。(自慢にはなりませんが、私は全ての大会ドローを保管しております。) 懐かしいものです…

室蘭で開催された、1年生の春のリーグ戦で2部降格を味わい、今田主将を中心に試合会場のコートの中で正座をして反省会が開かれました。それが私の学生選手生活の始まりでした。その時は正直言いまして、事の重要性の認識が希薄であり、安易に考えておりました。

2年生となりましたが、リーグ戦では肝心な所で敗退し、1部昇格に寄与出来る働きは出来ませんでした。
個人戦においては、徐々に他の大学の先輩達のマークにあい、ドローも常にチャレンジなものであり、16本止まりが続きました。
新人戦では、当学として初の団体・個人戦優勝を果たすことが出来ました。
思い出に残るのは個人戦決勝でして、相手は鳴り物入りとして学連に入ってきた北海学園の1年生、佐藤・田中でした。ボーッとして試合に入ってしまった途端、あっという間にゲームカウント0-4に追い込まれていました。
その時に福光先輩が下記をアドバイスしてくれたことを、今でも忘れません。
「0-4になった事は忘れて、1ゲームずつに集中する事。意識をするのは必ずポイントを先行する事、そうすればマッチポイントを取られる事は無いんだから…」
0-4から5ゲーム連取し、大逆転での優勝でした。

3年生になりましたが、リーグ戦での不甲斐無さは相変わらずでした。大事な試合で必ず1敗してしまうのです、それも実力的には自分達より劣る相手にです…
函館で開催された秋のリーグ戦は、チームとして絶対の自信を持って乗り込みましたが、残念ながら雨天中止に泣かされました。
個人戦では、春季個人戦、インドア大会で準優勝でしたが、ここでも頂点を獲得出来ずに1年が経過しました。市戸・工藤ペアが選抜大会で優勝した年でもあります。

いよいよ最終学年迎える事となりました。
気持ちが入れ込むほどコンディションは上がらず、又、近藤の怪我もあり、小樽での春季リーグ戦でも入替戦に臨めず、第2シードで臨んだ個人戦も32本止まりで、最悪の春となってしまいました。

その後、北海道・東北・北信越3地区対抗に工藤とペアを組んで参加し、個人戦でベスト8までいきました。春季個人戦で32本止まりであったので、個人戦のドローは第3シード、東北学院大の後藤ペアのパックでしたが、それを簡単に撃破し、勝ち進む事が出来ました。
このあたりから調子が上向きになってきて、3地区対抗後の全道学生大会ではそれほど接戦も無く、個人戦優勝する事が出来ました。円山コートでの決勝は、最後は1コートのみを使用して行われるので、気持ちが良かったのを覚えております。

最後の秋のリーグ戦がいよいよ帯広で開催されます。泣いても笑っても、学生生活最後のエール交換の場です。
2部リーグ戦の中では、当学と北大医学部(エースに小林・中江ペアというのがいました。個人戦ベスト8 or 16レベルの実力)の一騎打ちの様相でして、決戦までは問題なく勝利していきました。
決戦の北大医学部戦を迎える訳ですが、2次戦で渡部・近藤と小林・中江ペアが戦うことになりました。試合が始まりましたが、いつになく相手後衛は近藤を攻め立て、サイドパッシングを多用してきました。ゲームの組立てを修正する事が出来ず、遂に大将同士の戦いに負けてしまいました。戦歴では圧倒的に優っていましたが、まさにゲームの雰囲気に流されたという感じです。

誰もが今シーズンも悲願達成ならず、と愕然とした状況で救世主が現れました。当時、一年生ペアであった辻山・市川ペアです。3次戦までもつれ込み、相手大将ペアの小林・中江ペアに彼らは勝ったのです。辻山は泣きながらボールを打っていました、私はその光景を今でも忘れる事が出来ません。
最後は勝利し、ベンチに戻って来た二人を、私は泣きながら抱きしめました。不甲斐無い大将ペアを、1年生が救ってくれたのです。これで、ついに入替戦臨める事が出来ました。

入替戦は、当時一般男子でも活躍していた江刺家監督率いる、帯広畜産大学が相手でした。1次戦を2-1で終え、2次戦で田中・工藤ペアが相手大将に敗れ、3次戦で大将戦となりました。その時の心境は、気分が高揚すると共に、「最後は大将の責任になるんだなぁ…」と冷静に感じたものです。
それでも、試合に入ると緊張感が高まり、1ゲーム目のスタートも思うようにラケットが振ることが出来ませんでした。それを救ってくれたのは近藤でした。
ボールカウント2-2から弱気になってあげたロブが短くなり、相手後衛が高い打点でセンターを割ってきました。
今まで時として、自分より弱気な面を見せる事が多かった近藤ですが、その時奴は腰を落すことなく、相手のセンターパッシングを上から押さえつけたのです。
私はそれで完全に目が覚めました….

その後は、学生選手生活で最高のパフォーマンスを発揮する事が出来、集中力も最大限に高まり、声も出ないくらいに淡々とボールを配球しました。ボールも走りました。
マッチポイント前の応援、「そーれもう一本、押せ!押せ!」の掛声が、今でも耳に残っています。
最後は近藤がセカンドレシーブをアタックし、ゲームセットの声を聞きました。結果は5-0の完勝でした。
学生生活最後のエールは、嬉し涙と共に大声を張上げた記憶が残っています。

第1シードで臨んだ個人戦では、少々気抜けもあったのでしょう、ベスト8で敗退しました。

その後、インドア大会準優勝、選抜インドア優勝で学生生活の有終の美を飾る事が出来ました。

他校の監督・選手やOB諸先輩方からも「団体戦に弱い渡部・近藤組」と揶揄されてきましたが、最後の入替戦の戦いを思い起こせば、やはり技術も大切、されど精神力はもっと大切、という事をまざまざと感じさせられました。

その後は、後輩達が伝統をしっかりと受け継いでくれて、今のポジションを維持し続けています。その間、優秀な選手達も多く排出し、それぞれ立派な社会人として各分野で活躍しています。私自身も学生時代には気付くことが出来なかった、強い精神力の確立と、人間形成の重要性を、今後も現役学生には特に認識してもらいたいと思っております。

今春に入部する若い息吹達の成長に期待しておりますし、2年生以上、特に大将ペアとなった奴らには、上述の様な強い精神力の保持を期待するものであります。当時の殲滅戦と現在の点取り戦では、戦い方も異なってきているでしょうが、大将の役割は大きく変わるものでは無いと思っております。

昔のドローなど紙質も粗悪で、今では茶色に変色していますが、私の青春時代を思い出させてくれる大切なものです。久しぶりにそれを見て、学生時代を回想しながら筆を取った次第です。。

「心技体の充実をはかり、掴め日本一!」いつでも、いつまでも後輩達に声を掛け続けたいと思います。

総監督におかれましても、体調維持に特に留意され、いつまでも元気でいてくれる事が、我々OB達の切なる願いです。

厳しい戦いが予想される春季大会を、強い精神力を持って臨み、必ずや王座に参戦してくれる事を、心より祈願しております。
昨年の王座にはOBの山崎が初参戦してくれました。今年も一人でも多くのOBの参戦を増やし、総監督と酒席を共にさせて頂きたいと思っております。

敬 具

渡部誠之
JAN/30/2008

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